環境経済・政策研究
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3 巻, 2 号
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Articles
  • 宮永 健太郎
    2010 年 3 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2010/08/26
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    環境ガバナンスの意味を正確に評価するためには,「ガバメントからガバナンスヘ」だけでなく,「環境ガバナンスはガバメントにどのような影響を与えるのか」といった視点に基づいた分析が不可欠となる.神奈川県の水源環境税創設時に設けられた水源環境保全・再生かながわ県民会議の実態調査を通じて,環境ガバナンス組織の構築・運用が地方自治体に影響をもたらすための構造的条件を分析した.その結果,組織の自律性を担保すること,ミッションを主体的に掲げて活動する「活動組織的性質」を発揮すること,それに共感者や組織活動の担い手を巻き込む仕組みを組織にビルト・インすることなどの重要性を明らかにした.

  • 持田 亮, 狩野 秀之, 前田 幸嗣
    2010 年 3 巻 2 号 p. 13-25
    発行日: 2010/08/26
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,林産物貿易の自由化の進展により急増した森林伐採由来のCO2排出を削減するための森林環境政策として,林業経営者に自ら森林を保全させる動機付けを与える森林保全への対価(森林保全インセンティヴ)を支払う経済的誘因政策を考え,その実現可能性について検討した.その結果,森林保全インセンティヴに基づく経済的誘因政策は,幾つかのCO2の削減方法よりも費用対効果が高いことを明らかにした.また,この政策が,直接規制の際に必要な監視費用等を要しない点,対価の具体的な配分方法を明示する点,林業経営者の生計を圧迫しない点で利点を持ち,政策手段としての実現可能性が高いことを明らかにした.

  • 林 公則
    2010 年 3 巻 2 号 p. 26-37
    発行日: 2010/08/26
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,日米安全保障体制の下で,軍用機騒音被害が横田基地周辺住民にどの程度押し付けられてきたのかを,社会的費用という概念を利用して,明らかにすることである.本稿では,横田基地における軍用機騒音被害の状況を示した上で,損害賠償額に関する訴訟の争点を整理し,社会的費用の推計を行っている.推計の結果,1973年5月から2004年11月までの期間で,全共通被害額の2.4%だけが新旧の訴訟を通じて原告らに賠償されたことが明らかにされた.換言すれば,この間の2108億円の全共通被害額のうち,2058億円が「考慮されざる費用」として横田基地周辺の住民に押し付けられてきたということになる.

  • 鶴見 哲也, 馬奈木 俊介, 日引 聡
    2010 年 3 巻 2 号 p. 38-49
    発行日: 2010/08/26
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    近年,貿易の自由化に向け国際的な取り組みが活発化している.一方,エネルギー消費の動向は地球温暖化や硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染に関連するだけでなく,エネルギー安全保障の観点からも重要と考えられる.本稿では,先行研究における分析上の問題点,すなわち,内生性や系列相関の問題などに対処することで,貿易の自由化がエネルギー消費量に及ぼす影響を再検討した.その結果,貿易の自由化は,発展途上国(非OECD)では,短期および長期ともに,エネルギー消費を増加させる方向に働く一方で,先進国(OECD)では,短期的にはエネルギー消費を削減するが,長期的にはエネルギー消費を増加させる効果を持つことが明らかとなった.また,短期的な影響は非常に限定的であるが,長期的な影響は大きなものとなることが明らかとなった.

  • 澤田 英司
    2010 年 3 巻 2 号 p. 50-59
    発行日: 2010/08/26
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    面源汚染負荷削減に対して環境被害課税導入の可能性が検討されてきた.本研究では環境被害課税下において経済主体が互いにモニタリングと制裁を行うピア・プレッシャー環境が生じると想定した上で最適課税と経済主体の協力行動について分析を行い,それぞれについて先行研究とは異なる結果を得た.先行研究で最適課税は経済主体それぞれに水域の環境被害全額を補償させることとされていたが(100%ルール),ピア・プレッシャー環境が存在するとき100%未満の補償を求めることが最適となった.また,最終的に協力するインセンティヴを持つことには変わりないが,協力前の経済主体が置かれる状況によって協力後の削減努力水準が変化することが分かった.政策を決定する上で協力後だけでなく協力前の経済主体の状態に対しても注意を払うことが重要となる.

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