抄録
重度の半側空間無視と失語症を併発した脳血管障害患者1例を対象に,教示方法の違いによる標的行動の出現の異同について検討した.研究デザインは操作交代デザインを用い,標的行動は左上肢拳上動作とした.教示方法は,「声かけ」,「ジェスチャー」,「声かけおよびジェスチャー」,「手添え」の4つとした.「手添え」の教示は,挙上動作回数が他の教示に比べ有意に多く,全セッションで挙上動作がみられた.「ジェスチャー」の教示は,他の教示に比べ挙上のみられたセッション数が有意に少なく,「声かけおよびジェスチャー」や「手添え」に比べ挙上回数が少なかった.このことから,重度半側空間無視と重度失語症を呈した脳血管障害患者では,教示方法によって標的行動の出現に違いがある可能性が考えられた.重度高次脳機能障害患者に対するリハビリテーションでは,教示方法によって標的行動の出現に差があることを考慮することが必要である.