抄録
本研究では起き上がり動作を7区分に細分化し,行動項目とプロンプト手順を記載したチェックシートを作成し,これを利用してプロンプトを提示する手順やタイミングについて指導を行った.そして,標的行動を引き出す時のセラピストの行動について,チェックシート指導期の訓練と通常の訓練を比較検討した.対象セラピストは臨床経験5年で,対象患者は90歳女性の両片麻痺患者であった.ベースライン期では,通常の起き上がり動作訓練を行った.チェックシート指導期では,セラピストに対しプロンプトを提示するタイミングと手順についてチェックシートを利用して指導した.結果,ベースライン期では,『プロンプトを提示せずに身体介助をする』,『すぐにプロンプトを提示する』というセラピストの行動が見られた.これに対し,チェックシート指導期では,『階層的にプロンプトを提示する』,『5秒待ってから次のプロンプトを提示する』という行動が生じた.また,このセラピストの行動変化に伴い,患者の自立度に改善が見られた.従って,チェックシートを使用した指導方法は,セラピストに対し先行刺激と後続刺激のコントロールを学習させることができ,結果,セラピストに好ましい行動変化を及ぼす効果的な指導方法であったといえた.