2020 年 21 巻 1 号 p. 23-32
【目的】表情研究では他者の笑顔を見ているとき, 観察者は同じように笑顔を示すことが報告されており, 他者の表情に対して共鳴的に表情応答を返すことで, 双方向の対人コミュニケーションが成り立つ. そこで, 健常者を対象とし自伝的記憶と表情フィードバック利用により, 喜び表情の摸倣が促進されるかを検討した. 【方法】大学生20名を自伝的記憶の聴取を行う群と表情筋ストレッチを行う群に分け, 動画注視中の対象者の表情を録画, 表情摸倣の変化を検証した. 【結果】各群における表情の測定値比較では, 介入前での群間差は認められなかったが, 介入後ではストレッチ群の方がより喜び表情を示す結果となった. 【結論】表情筋ストレッチの利用という, より簡便な方法による対象者の表情応答改善の活用が期待できる. 今後は脳損傷により表情摸倣が低下した状態への効果を検討していく.