リハビリテーション連携科学
Online ISSN : 2435-7111
Print ISSN : 1880-7348
21 巻, 1 号
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展望
  • 藤田 佳男
    原稿種別: 展望
    2020 年 21 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    近年, 交通事故は減少しているが, 高齢者や病気を持つ免許保有者の交通事故が注目されている. 道路交通法の制定は障害者の運転への道を開いたが, 昨今の交通事故対策として病気の申告義務や75歳以上の免許更新者に認知機能検査を課すなどさまざまな改正が行われている. 本邦の運転支援は, 国立障害者リハビリテーションセンターから始まり, 当初は更生訓練が中心であったが2000年以降作業療法士などの医療系専門職が多く関与している. また, 教習指導員も以前から関わっている専門職であり, 医療機関と教習所の連携が進んでいる. 免許行政には高齢免許保有者などへの対応として看護師を中心に医療系専門職の配置がみられる. 北米では運転リハビリ専門家協会や米国作業療法協会が運転に大きく関与しており, 限定免許が運用されている地域もある. 今後この分野の連携を深めるには医療と免許行政の協力による制度構築が必要であり, 今後の動きが期待される.

原著
  • 岡本 隆寛
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】地域生活する統合失調症者の利用する施設・就労状況の違いやセルフスティグマ, 対人関係因子と, リカバリーレベルとの関連を明らかにすることを目的とした. 【方法】デイケア, 就労継続支援A/B型事業所, 特例子会社を利用する342名を対象に, 日本語版 Recovery Assessment Scale によるリカバリーレベルと Link スティグマ尺度, 情緒的支援ネットワーク尺度, ピアサポート経験, 趣味, 病名開示などの個人属性を評価した. 【結果】統合失調症者のリカバリーレベルは, 利用するサービスや就労状況により差異がみられなかった. 重回帰分析では, 職場や友人/医療者からの高い情緒的支援の認知, 低いセルフスティグマ, 趣味, 高年代, 初診年代の低さが有意な変数として選択された. 【結論】就労の有無や利用施設の違いよりも, 他者からの情緒的支援やセルフスティグマの軽減がリカバリーを促進する可能性が示唆された.

  • 増山 英理子, 作田 浩行
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】表情研究では他者の笑顔を見ているとき, 観察者は同じように笑顔を示すことが報告されており, 他者の表情に対して共鳴的に表情応答を返すことで, 双方向の対人コミュニケーションが成り立つ. そこで, 健常者を対象とし自伝的記憶と表情フィードバック利用により, 喜び表情の摸倣が促進されるかを検討した. 【方法】大学生20名を自伝的記憶の聴取を行う群と表情筋ストレッチを行う群に分け, 動画注視中の対象者の表情を録画, 表情摸倣の変化を検証した. 【結果】各群における表情の測定値比較では, 介入前での群間差は認められなかったが, 介入後ではストレッチ群の方がより喜び表情を示す結果となった. 【結論】表情筋ストレッチの利用という, より簡便な方法による対象者の表情応答改善の活用が期待できる. 今後は脳損傷により表情摸倣が低下した状態への効果を検討していく.

  • 工藤 滋, 岡 愛子, 和田 恒彦
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】坐骨神経鍼通電実習における教育のため, 2つの指標間の正確な等分点決定の過程に関与する要因について検討した. 姿勢および平面上の等分点決定で用いられた方略を要因として, 実際の鍼通電を想定した立体への刺鍼場面を実験的に設定し, 2要因が誤差距離に及ぼす影響を検討した. 【方法】理療科生徒10名に対して, 人体模型上の3つの部位に刺鍼する課題を提示し, 目標部位と刺鍼部位の誤差距離から, 姿勢と方略の影響を分析した. 【結果】対象者から遠い模型の斜面に当たる点では方略に関わらずY軸方向の誤差距離が有意に大きく, 模型上面に近い点では触運動群はX軸方向の誤差距離が有意に大きかった. 【結論】斜面の点では姿勢の影響が大きく, 上面に近い点では平面上の実験と同様の結果であった. そこから, 姿勢を調整して刺鍼面が相対的に上面に近づくようにし, 平面上の実験で得られた等分点の決定方法を用いるのが有効であると考えられた.

  • 井上 宜充, 隆島 研吾, 高木 峰子, 島津 尚子
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢心不全初回入院患者が自宅退院する過程において, 患者, 担当理学療法士が必要と考える退院支援について因子分析 (Q技法) でニーズを類型化し両者の差異を明らかにすること. 【方法】対象は心不全患者16例と担当理学療法士とした. 患者に必要な退院支援 (35項目) に関するニーズを因子分析で類型化した. 【結果】患者群は「疾病理解・生活指導重視型」「再発予防重視型」「歩行・移動能力重視型」「運動・食事重視型」「精神的サポート必要型」の5因子に類型化された. 理学療法士群は「包括的疾病管理型」「運動指導重視型」の2因子に類型化された. 【結論】心不全初回入院患者が必要とする退院支援は多様な類型を呈した. 理学療法士群の退院支援に関するニーズの類型はわずか2つの類型に集約し, 特に包括的疾病管理を重視する類型を呈した. また, 理学療法士の一部は運動指導の項目を重視した考え方を類型として持っていた.

事例報告
  • 丹所 忍
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 21 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】心的回転に困難を示す先天盲生徒1名への室内の歩行指導において, 外部参照枠の活用を促す指導の効果を検討した. 【方法】室内の各壁に基準点を設けて外部参照枠とし (基準点0・180・90・270度), 各基準点での触地図構成により配置理解を促し, 基準点と対象物の往復移動により身体移動するイメージの形成を図った. 【結果】指導前, 探索のみで室内配置を理解して正確な触地図構成と移動が可能な基準点があった一方で, 心的回転が必要となる基準点90度では教室の中央にある対象物の向きの理解が不正確で, 正確な触地図構成となるまでに他の基準点よりも多くの指導回数を必要とした. 指導後は, 未指導の基準点や未指導の教室でも正確な触地図構成と移動ができた. また, 外部参照枠の活用を必要とする空間課題の成績が向上した. 【結論】外部参照枠の活用を促すことで, 先天盲生徒における室内の配置知識と移動の正確性が向上する可能性が示された.

資料
  • 前原 和明, 八重田 淳
    原稿種別: 資料
    2020 年 21 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】職業リハビリテーションに携わる支援者の実施する自己理解の支援行動と発達障害者本人の認識する支援の意味の関連性を検討する. 【方法】発達障害者本人に対するインタビュー調査結果を自己理解の支援行動の仮説コードを用いてテキストマイニングにより質的に分析した. 【結果】共起ネットワーク分析の結果から自己理解の各支援行動に対する支援の意味が明らかになった. 【結論】発達障害者3名の自己理解の支援を実施することの意味として, 「伝えることの難しさ理解」, 「就業への不安解消」, 「困り感の認識」, 「困難感への対処理解」の4つが考えられた. このような意味を支援者が認識することは, 実践上有用なだけでなく, 支援者が自らの支援の説明責任を果たすことにつながることとなり, 発達障害者の支援をより質の高いものとしていくことができると考えられた.

  • 行動自己評価の変容 : 研修プログラムの有効性に関する検討
    髙村 祐子, 柳 久子, 川野 道宏, 北島 元治
    原稿種別: 資料
    2020 年 21 巻 1 号 p. 70-80
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】看護専門学校の3年課程に勤務する新人教員の継続教育として集合研修を行い, 受講前後での看護学教員ロールモデル行動の変化を明らかにするとともに, 研修プログラムの有効性を検討する. 【方法】A県内の3年課程に勤務する専任教員を対象に集合研修を2回開催した. その前後で看護学教員ロールモデル行動の自己評価を実施し, 経験年数別に分析した. 【結果】ロールモデル行動自己評価得点は, 新人教員が最も低く, 経験年数の増加に伴い高値を示した. また, 新人教員のみ研修受講後の得点は有意に改善し, 全ての下位尺度で1回受講者より2回受講者の得点が上昇した. 【結論】研修受講後, 特に新人教員においては看護学教員ロールモデル行動の質の向上がみられた. よって, 本研修は新人教員に有効であったといえる. また, 研修後の職場内での実務訓練による成長も推測され, 今後研修と実務の継続的な実施・評価の必要性が示唆された.

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