2015 年 13 巻 4 号 p. 164-167
洪水常襲地帯である熊野川流域には水害対策の1つとして「上がり家」と呼ばれる一時避難のための小屋が存在する。本研究では和歌山県田辺市本宮町請川地区を対象地とし、聞き取りと実測調査により上がり家の実態を把握することを目的とした。結果、伝統的上がり家は明治22年の水害後、地主や商業者により母屋より高台に建設され、倉庫としての機能だけでなく台所や寝室など避難生活のための機能を備えていた。また昭和28年の水害後の被災者支援として建設された公営住宅も、払下げ後に一部上がり家に転用されていた。多くの上がり家は貸家や隠居などに利用形態が変遷し、当地区に7軒現存しており、水害対策として現在も有効であることを明らかにした。