子供・女性に対する不審者や声かけなどの「脅威事案」は,性犯罪の前兆であるとされているが,その発生が本当に将来の性犯罪のリスクを高めるのか,実証的な知見は不十分である.そこで本研究では,Knox法を用いた分析から,脅威事案と性犯罪との間の時空間的な近接性を明らかにすることを目的とする.2014-2016年に警視庁管内で発生した脅威事案12064件,性犯罪1722件の分析から以下が明らかとなった.a)脅威事案と性犯罪との時空間的近接は,子供でのみ一般的に確認される.b)脅威事案により高まる性犯罪の発生リスクの程度,期間,距離範囲は,脅威事案の内容により異なる.これらの結果に基づき,本研究では,脅威事案を性犯罪の先行指標として用いることのできる可能性について議論した.