2019 年 18 巻 1 号 p. 87-91
首都圏においては、規制緩和や都市再生の潮流が強まっていることなどを背景に、近年超高層建築物の建設が相次いでいる。首都圏郊外における超高層建築物の立地特性としては、都心から放射状に延びる鉄道路線沿線への集中や既成市街地における開発の増加などの傾向が明らかになっている。このような超高層建築物の集積による周辺市街地環境への影響が懸念されている。環境影響評価法や地方自治体による環境アセスメントに関する条例によって大規模開発を行う際の環境アセスメントの実施が義務付けられているが、これらは個別の開発に対する評価を対象としている。超高層建築物が集積して立地する地域では、複数の開発によって影響を受けているために、個別開発にのみ注目した環境アセスメントでは周辺環境へ与える影響を正確に測ることができないことが懸念される。そこで本研究では、近年超高層建築物の集積が発生している武蔵小杉駅周辺市街地を対象に、複数の開発による複合的な影響がどのように予測されているか、そして実際に発生している影響を調査する。この結果を個別の開発に対する環境アセスメントの結果と比較することによって、市街地環境への影響をより正確に予測する方策を検討するための基礎とすることを目的とする。