2021 年 19 巻 4 号 p. 495-500
2030年代に70%以上の確率で発生するとされている南海トラフ地震は西日本に甚大な被害をもたらし,災害の復興に相当な期間が必要になると予想される.阪神・淡路大震災以降,新潟県中越地震や東日本大震災などで,復興事業の合意形成の難航や,被災による地域コミュニティの崩壊,個人の住宅再建の困難さ,復興の長期化などが顕在化した.こうした経験から,「事前復興」の取組が必要とされている.本研究では,南海トラフ地震による被害が被災地域へ与える長期的な影響を明らかにすることで,事前復興空間計画における施策が復興過程で発揮する効果を考察し,事前復興空間計画における課題を明らかにする.そして,従来の事前復興空間計画の方法論と比較した,シナリオプランニングを用いた方法論の有効性を考察する.