都市計画報告集
Online ISSN : 2436-4460
気候変動時代に水とともに暮らすための沿岸空間とは?
大阪市の湾岸5区における沿岸の断面形の把握
村上 修一
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2022 年 21 巻 2 号 p. 230-234

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抄録

気候変動時代に水とともに暮らすための沿岸空間の有り方を探る端緒として,大阪湾に面する大阪市5区を対象に,沿岸の断面形を調査した。調査の結果,以下のような特徴がわかった。①特定用途で占用され公共のアクセスが想定し難い沿岸が全体の約6割を占めている。②公共のアクセスが想定し得る約4割の沿岸のうち,約8割で水際が垂直面であり,約8割で独立壁または台形の堤防が存在し,約9割で堤防基部,堤外,傾斜面の上端に比べて堤内が同じ高さか低い。③水際,堤防,堤内の断面形の組み合わせが21通りあるものの,水際が垂直,堤防が独立壁,堤内が同じ高さか低い,という特定の組み合わせが約5割を占めている。④堤内から堤外に対する可視性や到達可能性を低めると予想される要素が,沿岸の相当部分を占めている。⑤割合は低いものの,垂直面以外の水際は水に対する接近可能性を高め,堤防の無い平坦面や傾斜面,堤防や堤外よりも高い堤内は,堤内から堤外に対する可視性や到達可能性を高めると予想される。今後,堤内から堤外に対する可視性や到達可能性,断面形の形成経緯,再編における適用の可能性,親水利用に関わる空間形態の把握を行う必要がある。

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