2023 年 22 巻 3 号 p. 413-419
本レポートでは、物流事業者による生活支援サービスの事例として、ヤマト運輸株式会社の取り組みを紹介する。この取り組みには、居住地域を広くカバーできる物流拠点に併設してコミュニティ・生活支援サービスの提供拠点を設置できること、物流業界で地域巡回を行うドライバーの経験を活用する機会を提供できること、そして物流事業者としての経験を活かした新たな形態のサービス拠点を構築できる可能性があることなど、いくつかの利点がある。しかし、物流事業者によるコミュニティ・生活支援サービスの提供拠点の展開が住宅地をどれほど効果的にカバーし、住民が安心できる生活環境の構築に寄与できるかは不確かなままである。上記のような拠点展開の影響を明らかにする研究は、特に高齢化社会における住民の生活の質の観点から、効果的・効率的なコミュニティ形成を議論する際、必要不可欠な基礎資料として貢献することが期待される。