2007 年 6 巻 3 号 p. 100-107
本稿では,文献調査をもとに,英米の防犯まちづくりの基礎となっている「場所に基づく防犯理論」(PBCP)の系譜と近年の動向を把握した.その結果,以下の3点が示された.1)1960年代に誕生したPBCPは,1990年代までに「効果の限界性」,「対象空間の限定性」,「実践の困難さ」,「副作用への懸念」の4つの限界に直面した.2)それを踏まえて1990年代後半以降に現れてきた後期PBCPは,「包括的概念」,「対象空間の拡大」,「実践への配慮」,「上位概念への位置づけ」の4つの性格を含むものとなった.3)PBCPは,ニューアーバニズムなどの現在のまちづくりの理論と大きな目標を共有しつつ発展している.