抄録
昭和57年6月より4年間入院して神経発達学的治療を受けた脳梗塞359名, 脳出血278名, 計637名についての治療成績報告である。患者プロフィールに関する基礎データと, 臨床像, 移動能力, 患側上肢機能, ADL能力, バランス能力, 患側手指機能, 失語症程度, 構音機能等に関する臨床データ等約2万5,000項目をコンピュータ処理した。今回は歩行能力とADL能力の改善度について分析した。屋外歩行自立者が入院時よりも27.7%(177名)増加して退院時には351名(総数の55%)となり, 逆に歩行不能者が28.6%減少して50名(総数の7.8%)となり, p<0.01%の改善の有意差が見られた。ADL能力も全自立者が, 入院時よりも20.6%(131名)増加して, 退院時には252名(総数の39.6%)となっている。この歩行能力とADL能力改善に最も因果関係が深かったのはバランス能力の改善であり, その相関性はp<0.01%の有意差であった。統計の母集団には60歳以上の者が284名(44.4%), 発病日から1年以上経過した陳旧例が376名(60%)も含まれている不利な条件にもかかわらず, 神経発達学的治療によって一定の改善が見られた。