理学療法学
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報告
歩行速度と股外転筋活動量の関係
―健常者例での基礎研究―
対馬 栄輝尾田 敦近藤 和泉
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1994 年 21 巻 4 号 p. 284-288

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抄録

一般に歩行速度が上昇すると下肢の筋活動は増大するといわれる。歩行速度の増加により,股外転筋力もさらに必要になると考えられ,股関節周囲筋の筋力低下を伴う股関節疾患患者では跛行が出現しやすくなると推測できる。そこで,本稿は歩行速度の変化に伴い,股関節外転筋活動量がどのように変化するかを目的として検討するものである。
方法は,健常な成人女性10名を対象にトレッドミル上での歩行を2.5〜5.0km/hの間の速度で段階的に変化させ,各歩行速度で記録した股外転筋活動量を比較した。その結果,各速度間で歩行時股外転筋活動量に有意な差はみられなかった。歩行速度が増加しても,股外転筋活動量が変化しなかった原因としては骨盤の固定力を他の股関節周囲筋,軟部組織に頼っていることや足・膝関節,さらにはトレッドミルの床面で衝撃力が吸収されている可能性などが推察された。
以上に加えて対象を健常者とした制約もあるが,跛行が外転筋のみに原因を有するとすれば,速度の影響を考慮する必要性は比較的少ないのではないかと考えられた。

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© 1994 公益社団法人 日本理学療法士協会
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