2002 年 29 巻 6 号 p. 192-198
スキーマとは構造化された一群の概念から成り立つ知識のことで,問題解決過程において果たす役割りは大きい。本研究では,診断名により呼び起こされたスキーマが情報(先行オーガナイザー)を付加することによりどのように変化するのか,スキーマの構成要素である変数(量)およびフレーム(質)と,フレームの呼び起こしを指標に,理学療法学生,新人理学療法士および熟達理学療法士で比較を行い,理学療法士における問題解決スキーマの発達過程について検討した。その結果,熟達していくにつれ変数は増大し,呼び起こされるフレームおよびフレーム構成もより質が高くなることが明らかとなった。また,変数の増大とフレームの構成の質的向上がほぼ同時期に見られたことから,理学療法士の問題解決スキーマは直線的ではなく,らせん的に発達するものと推測された。これらの発達は,変数の増大ならびに質的向上が他の発達要素より先行して起こると推測されたことから,問題解決能力を育成するには知識獲得を優先に行い,獲得された知識が多面性を持つような教授方略を行う必要があると考えられた。しかし,問題解決能力の発達には情意的側面の関与も重要であり,今後はこれらを含めた検討が必要であると考えられた。