2002 年 29 巻 6 号 p. 185-191
本研究の目的は,下り勾配歩行の勾配角度による影響を明確にすることである。健常男性19名を対象に,トレッドミルを用いて平地歩行と勾配角度4°,8°,10°の下り勾配歩行を測定し,比較した。測定項目は,関節角度,床反力,筋活動とした。その結果,各項目ともに勾配角度により影響がみられた。下り勾配歩行では重力により前下方への力が生じる。そのため下り勾配歩行では,平地歩行に比べ,身体を前方に推進する力よりも,重心を後上方へ制動する力が必要となる。このことが,下り勾配歩行を特徴づけていると考えられた。また膝関節の安定性に寄与するとされる半腱様筋の筋活動は,勾配4,8°の下り勾配歩行では平地歩行よりも低下し,勾配10°では筋活動が増加する傾向を示した。このことより,下り勾配歩行は勾配角度により運動制御の仕様が異なることが示唆された。