抄録
歩行障害を有する患者に対する体重免荷装置を用いたトレッドミルによる歩行トレーニングが開発され,近年,その有効性について多く報告されてきている。このトレーニングの特徴は歩行時の床反力を減少させるだけでなく,必要なエネルギー消費を少なくすることができることである。しかしこのときの下肢筋の筋電図学的特徴については一致した見解に至っておらず,詳細は不明である。本研究の目的は,体重免荷歩行を行ったときの下肢筋活動を測定し,免荷量の増加による下肢筋活動の変化を明らかにすることである。健常成人10名を対象とし,トレッドミル上を時速4kmで歩行させた。全荷重歩行およびハーネス式の体重免荷装置を用いた歩行(10〜50%免荷)を行わせ,このときの筋電図を記録した。測定筋は大腿直筋(RF),内側広筋(VM),外側広筋(VL),半膜様筋(SM),大腿二頭筋(BF),前脛骨筋(TA),内側徘腹筋(GC)とした。一歩行周期の筋活動量の平均値において,荷重量の減少に伴って有意に減少した筋はRF,VM,VL,GCであった。逆にSMでは有意な増加を示した。SMの増加は,重力による加速度が減少して歩行の推進力が得られにくくなるために,代償的に働いたのではないかと考えられ,体重免荷歩行トレーニングが垂直方向への免荷に働くだけでなく,水平方向の推進力に対して抵抗として働く可能性があることが示唆された。