理学療法学
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症例研究
長期間経鼻チューブ栄養だった仮性球麻痺を呈する一症例の摂食・嚥下障害に対する継続した取り組み
高井 逸史村上 将典山地 純子山口 武彦
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2005 年 32 巻 1 号 p. 41-48

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抄録
今回,摂食嚥下障害の一症例に対し2年間にわたり継続した取り組みを行ない,アプローチ手法を三段階に分類し検討した。症例は92歳の女性で,脳梗塞にて仮性球麻痺となり,誤嚥性肺炎を患い,覚醒が悪く経鼻チューブ栄養であった。第一段階(2001年12月〜2002年11月)では,嚥下評価を行ない嚥下反射が認められ,ポジショニングなどの代償的手段や介助誘導を講じることで,安全な経口摂取が可能となった。ところが覚醒の低下による摂取量の減少が問題となった。そこで第二段階(2002年12月〜2003年5月)では,覚醒を上げる目的で,咀嚼運動を誘発した。さらに食材の感覚情報に関する知覚課題を与え,知覚探索を惹起することで,麻痺側の口腔機能の改善がみられた。第三段階(2003年6月〜2003年12月)では,スプーンでの自己摂取を目標に,口唇の触圧覚に関する知覚課題を実施した結果,頭部のコントロールが可能となり,上肢との協調した働きも一部可能となった。仮性球麻痺による摂食嚥下障害に対する理学療法について,具体的な課題をもつ食事場面において,介助誘導を施すだけでなく,認知的側面を考慮したアプローチの有用性が示唆された。
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© 2005 公益社団法人 日本理学療法士協会
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