2011 年 38 巻 2 号 p. 128-129
本研究は,デイサービス利用高齢者を対象に,足底への振動刺激(FVS)がバランス機能に与える影響を調査することを目的とした。対象高齢者は要支援1から要介護4のいずれかの介護認定を受けている18名(84.9 ± 5.0歳)であった。対象者へのFVSを15分間/回,2回/週で3ヵ月間実施した。対象者へのFVSの介入前後に,重心動揺計にて開眼時と閉眼時の重心動揺パラメータを測定した。また,10 m自然歩行時間(10 m歩行),Timed Up & Goテスト(TUG),ファンクショナルリーチテスト,体重負荷率を測定した。さらに足底の痛覚および二点識別覚を調べた。その結果,開眼時の総軌跡長,外周面積,実効値面積,実効値,Y方向最大振幅および閉眼時の総軌跡長はFVS介入後に有意に低値を示した。10 m歩行,TUGはFVS介入後に有意に低値を,体重負荷率は有意に高値を示した。痛覚は小指球および踵部はFVS介入後に有意に低値を示した。本研究では,FVSの実施によりバランス機能の改善が認められた。FVSは足底感覚を改善することにより,体重負荷率の増加をもたらすと考えられ,これにより重心動揺が減少(特に前後方向動揺)し,立位時の安定性が改善したと考えられる。また,10 m歩行,TUGの有意な減少は動的バランス機能が改善したためと考えられ,FVSの実施による足底感覚の改善,体重負荷率の増加が下肢の運動機能に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。