2016 年 13 巻 p. 47-68
本稿は、日本の文部科学省によって行われた「知的クラスター創成事業」がイノベーション政策として持つ意義に焦点を当てる。同政策は2002年にはじまり、2003年および2004年には指定地域が追加され、全国18の地域が指定を受けた。同政策では5年間で25億円の資金が各地域への助成金として配分された。この政策には詳細な評価プログラムも含められており、政策効果の研究を可能にしている。事業への参加者は、産学官連携を推進するコンソーシアムを形成することが義務づけられていたが、筆者は、これら18地域のすべてを訪問してコーディネーター、大学教授や研究者、大学発ベンチャーのマネージャー、および各地域の参加企業の研究者にインタビューを行ってきた。同政策の政策的含意を検討すると、日本の「知的クラスター創成事業」が官の役割に依存していることが特徴として浮かび上がる。今後は、大学におけるマネジメント能力を洗練させていくことによって産学官連携から産学連携に移行していくべきである。同政策における官のコーディネーターは、クラスターの活動を活発にするために多くの協力企業と研究者を連結してきたが、コーディネーターが大学での専門職となった場合には、大学が学術的な生産性をサポートするだけでなく、産学連携にもとづいた新たな大学発ベンチャーを迅速に支援するという重要な役割を果たすことができる。