イノベーション・マネジメント
Online ISSN : 2433-6971
Print ISSN : 1349-2233
研究ノート
ディグローバリゼーションの理論的分析視角
―パンデミックによる外生的危機と国際経営―
洞口 治夫
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 18 巻 p. 231-246

詳細
抄録

ディグローバリゼーションについての先行研究をサーベイすると、国際関係論における二分法であるリベラリズム(liberalism)と現実主義(realism)を対置させて多国籍企業行動への影響を議論している研究があることがわかる。2020年になると、こうした政治経済学的な要因に新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大が加わり、外生的な経済危機をもたらした。ディグローバリゼーションとして象徴的な役割を果たしていた米中貿易摩擦やブレクジットは、2020年初頭から顕在化した新型コロナウィルスによるパンデミックによって、全世界的、かつ、経済活動全般における具体的なディグローバリゼーション現象に塗り替えられた。ディグローバリゼーションの原因を論ずる際に、現実主義の見解に立つ場合、覇権安定が進むときにグローバリゼーションが深化し、覇権国によるパワーが揺らぐときにディグローバリゼーション現象が起こる、とする立論がある。米中間のパワーバランスが変化し、不可逆的な覇権の世界史的変化をもたらしている、とする見解もある。本稿では、新型コロナウィルス感染拡大への対応を誤った国が、大きな経済的損失を被り、国力を低下させ、覇権交代を引き起こす可能性があるという仮説を提起する。今後、貿易統計や直接投資統計データが公表されれば、この仮説を検証することが可能になる。

著者関連情報
© 2021 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
前の記事 次の記事
feedback
Top