イノベーション・マネジメント
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査読付き研究ノート
明治23年商法計算規定の制定の背景
―商法の形成過程に対する考察を中心に―
高野 裕郎
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2021 年 18 巻 p. 247-263

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抄録

本論文では、法制史の先行研究において明らかにされた複数の商法案およびその審議の議事録を手掛かりとして、明治23年商法公布に至るまでの経緯、商法案の規定内容の変遷および商法計算規定に関する審議の内容を分析することにより、明治23年商法計算規定の制定の背景について考察した。

本稿による考察の結果、明治23年商法計算規定の決定要因は、第1に、フランス・ドイツの商法を参考として、ロエスレルが財産目録・貸借対照表の作成および財産の時価評価を求めたこと、第2に、政治的・外交的理由から、その時最も現実的であった「ロエスレル草案」を原案とした商法の制定を政府が選択したこと、第3に、財産目録の作成と財産の時価評価規定に関して懸念があったものの、仮に商法計算規定の実施上の問題が生じた場合には、商法を早急に改正することで対応する方針とされたことという複合的な要因であったと言うことができる。

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© 2021 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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