抄録
目的)本研究の目的は運動機能の低下を有す健康水準の低い高齢者の身体活動を測定するためにADLの自立度を加えた尺度からなるモデルを作成することであった。この方法における有効な変数を明らかにするとともに,適応の限界を検討した。方法)施設で生活する健康水準の低い高齢者集団(以下,高齢者集団とする)60名を対象とした。従属変数は24時間の心拍数データから推定した身体活動(HRPA)であった。独立変数はADLに関する観察項目としてコミュニケーションの程度(以下,意志伝と表す)・食事動作・排便尿動作・移動動作・更衣動作・入浴動作・ベッド動作,病前の運動嗜好性(PAEXLと表記)と現在の運動嗜好性(POEXLと表記),排尿便時間の規則性(TOILETと表記)・生活の規則性 (RYHTMと表記)であった。これらの回答は5件法で得た。従属変数が心拍数によって測定した身体活動量である重回帰式を作成した。身体活動量に寄与する変数を求めた。結果)モデルはHRPA=1344.341-63.011×PAEXL+52.802×POEXL-62.150×移動動作能力となった。ADLに関しては有効な変数はなく,運動嗜好性はいずれも有効であった。重回帰係数は0.443を示した。それぞれの独立変数の95%信頼区間は過去の運動嗜好性-108.209~-17.812,現在の運動嗜好性6.504~99.100,移動動作能力-124.461~0.161であった。結論)現在の運動嗜好性はPAに対し正の影響を示し,過去の運動嗜好性が高い場合に負の影響を示した。これらの変数からなる尺度は,運動障害のある高齢者集団の身体活動測定尺度としてテストバッテリーに使用可能と考えられた。