抄録
多くの片麻痺患者は,種々の理由により背臥位からの起き上がり動作を円滑に行うことが困難となっている。その一つの要因として,片肘立ち位での安定性の低下があるものと考えた。そこで背臥位から片肘立ち位を経由した起き上がり動作時間ならびに片肘立ち位で静止した状態での静的条件と,片肘立ち位にて前後方向へ上半身を移動させた動的条件の圧中心軌跡(COP)を測定し,片麻痺患者16名と年齢,性別を一致させた健常者15名を比較することで,片麻痺患者の起き上がり動作能力の低下がCOPの特徴で説明できるか否かを検討した。その結果,静的条件でのCOPは2群間に有意差は認められなかった。しかし,片麻痺患者は比較対照群に比べて,起き上がり動作時間が有意に長く,動的条件でのCOP(重心移動距離は除く)は有意に成績不良であった。これにより,起き上がり動作をスムーズに行うためには,片肘立ち位での動的な安定性を得ることが重要な要因であることが示唆された。