理学療法科学
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19 巻, 1 号
February
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特集:脳血管障害の理学療法最前線
  • 潮見 泰藏
    2004 年 19 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    脳卒中患者が有する運動障害の特徴は,主として上下肢および体幹の随意的制御の消失ないしは低下によって生じる機能的動作能力の低下である。機能回復とは,現実的に意味のある具体的課題に対する遂行能力(機能的動作能力)の向上を意味し,その過程は運動学習におけるスキルの獲得過程ということもできる。本稿では,脳卒中患者に対して運動スキルの最適化を図るための方略として,運動学習理論を応用した理学療法的介入の実際について解説した。
  • 長澤 弘
    2004 年 19 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    脳血管障害患者に対する急性期理学療法について,「超早期(発症後2~3週間程度の期間)」に焦点を当てて概説する。1.脳血管障害の分類基準について,厚生省循環器病委託研究班による分類およびNINDS(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)の分類と臨床病型の特徴に関して復習する。2.超早期理学療法を展開するために,内科的治療および外科的治療の概要に関して再確認する。3.脳血管障害の種類と画像データのみかたを整理する。4.脳血管障害超早期における理学療法を実施していく際のリスク管理および座位耐性練習の具体的方法について概説する。5.超早期における予後予測と機能的帰結の重要性について概説する。
  • -最近の動向-
    網本 和
    2004 年 19 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:以下USN)に関する評価と治療アプローチの最近の動向について概説した。評価では重症度とタイプに加え,日常行動上での異常反応のチェック,および基本的な起居移動動作の特性を知ることが重要である。またその症状の特性として,課題依存性と姿勢変化による反応を分析することが必要であることを指摘した。治療アプローチでは,視覚と非視覚系,症状と症例の二つの要因を考慮し,USNのタイプすなわちメカニズムに応じた方法を用いることの重要性を論じた。さらに最近注目されているプリズム適応について紹介した。
  • 島田 裕之
    2004 年 19 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    介護老人保健施設におけるCVA患者の理学療法に関する留意点を概観した。慢性期における理学療法は,機能の維持や改善に対して有効であると考えられるが,視点を見誤ることでその効果は減退する。理学療法の方向性を決定するため,ゴール設定を明確にし,リスクを考慮しつつ運動療法や生活指導を行うことが重要である。とくに活動量の向上に対する系統的なアプローチが施設ケア成功の鍵になると推察される。
  • 樋渡 正夫
    2004 年 19 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    脳卒中に対する治療法は年々進歩しており,病型による治療法の選択や新しい薬剤による治療などについて,新たな基準が各種研究の成果として示されるようになった。本稿では,脳卒中患者のデータベース作成・解析成績,脳梗塞治療法としての抗血小板療法,抗凝固療法,血栓溶解療法,脳保護療法や,血管内手術による治療の進歩,さらには再生医療の導入について,その概略をのべる。
研究論文
  • 友利 幸之介, 中野 治郎, 沖田 実, 中居 和代, 大久保 篤史, 吉村 俊朗
    2004 年 19 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,間歇的伸張運動と持続的伸張運動によるマウスヒラメ筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を組織学的に比較検討することである。8週齢のICR系雄マウス18匹を対照群6匹と後肢懸垂法を2週間実施する実験群12匹に振り分け,実験群はさらに後肢懸垂の期間,右側ヒラメ筋に間歇的伸張運動を実施する群(間歇群,n=6)と同様に持続的伸張運動を実施する群(持続群,n=6)に分けた。また,これらの群の左側後肢は後肢懸垂のみの群(懸垂群;n=12)とした。結果,間歇群,持続群の平均筋線維直径は懸垂群より有意に大きかったが,この2群間には有意差は認められなかった。したがって,間歇的伸張運動,持続的伸張運動は,ともに廃用性筋萎縮の進行抑制に効果があることが示唆されたが,その効果には差はないと推察された。
  • 西田 裕介, 大塚 祐子, 原 司, 牧迫 飛雄馬, 久保 晃
    2004 年 19 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,2年が経過した時点の介護保険サービス利用状況の把握と要介護度別の介護保険サービス利用内容の比較および介護保険制度改定前と改定後を比較する際の基礎資料を得ることである。対象者は80名で,栃木県西那須野町にあるN総合在宅ケアセンターで通所リハビリテーション利用者である。要介護度別に支給限度単位数および全サービスの単位合計数を100%としたサービス利用率をそれぞれ算出した。また,サービス別利用率の結果を軽介護群(要支援~要介護度2)と重介護群(要介護度3~要介護度5)の2群に分類した。結果として,要介護度別のサービス利用率は,各支給限度額の約60%前後であった。また,軽介護群は通所型サービスを多く利用し,重介護群は訪問型サービスを多く利用していることがわかった。福祉用具貸与内容の比較から,重介護群は,在宅生活を中心とした環境設定が求められていると考えられる。
  • 千葉 直美, 半澤 宏美, 佐々木 誠
    2004 年 19 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    異なる肩関節屈曲角度での上肢クローズドキネティックチェイン(CKC)運動時筋力を測定し,運動方向による差異を比較するとともに,基本動作との関連を検討した。対象は若年健常女性14名(19.1±1.2歳)である。方法として,まず肩関節屈曲0°,30°,60°,90°方向への上肢CKCでの伸展運動時等速性筋力を,60,180,300 deg/secの運動速度で測定した。また,車椅子10 m駆動時間,30秒間に反復可能なプッシュアップ回数,T字杖免荷率の3項目を測定した。各肩関節屈曲角度における上肢CKC運動時のPeak Torque/Body Weightは,全ての運動速度において差異を認めなかった。筋力と基本動作との関係について,Peak Torque/Body Weightは,プッシュアップ回数との間に相関が示されなかったが,300 deg/secではいずれの運動方向においても車椅子10 m駆動時間との間に負の相関関係,60 deg/secにおける全ての運動方向でT字杖免荷率との間に関連があることが示唆された。また,T字杖免荷率と低角速度での肩関節屈曲30°方向におけるPeak Torque/Body Weightとの間の相関関係は統計学的に有意であった。以上より,異なる肩関節屈曲角度における上肢CKC運動時筋力は,運動方向によって関与する筋の種類や活動動員比率が異なると推察されるものの,運動方向特異性は示されなかった。また,車椅子10 m駆動時間は,CKC運動時筋力の角速度特異性が反映される一方で,運動方向の相違には影響されず,T字杖免荷率は,筋力の角速度特異性ならびに運動方向特異性に影響されることが示唆された。
  • 桝谷 真士, 渡部 雄樹, 佐々木 誠
    2004 年 19 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    多くの片麻痺患者は,種々の理由により背臥位からの起き上がり動作を円滑に行うことが困難となっている。その一つの要因として,片肘立ち位での安定性の低下があるものと考えた。そこで背臥位から片肘立ち位を経由した起き上がり動作時間ならびに片肘立ち位で静止した状態での静的条件と,片肘立ち位にて前後方向へ上半身を移動させた動的条件の圧中心軌跡(COP)を測定し,片麻痺患者16名と年齢,性別を一致させた健常者15名を比較することで,片麻痺患者の起き上がり動作能力の低下がCOPの特徴で説明できるか否かを検討した。その結果,静的条件でのCOPは2群間に有意差は認められなかった。しかし,片麻痺患者は比較対照群に比べて,起き上がり動作時間が有意に長く,動的条件でのCOP(重心移動距離は除く)は有意に成績不良であった。これにより,起き上がり動作をスムーズに行うためには,片肘立ち位での動的な安定性を得ることが重要な要因であることが示唆された。
  • 橋立 博幸, 内山 靖, 潮見 泰蔵
    2004 年 19 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    高齢者を対象に,既存のStep Testを一部改変した立位での反復ステップ運動によるパフォーマンステストModified Step Test(以下MST)を実施し,その信頼性および妥当性について検討した。高齢者51名を対象として,MST,膝伸展筋力,Timed Up and Go Test,歩行速度を測定した。MSTの課題は,静止立位から前方または側方に設置した台上にできるだけ速く一側の下肢を乗せ,再び元に戻すこととし,5回の反復所要時間を測定した。繰り返し測定した結果から級内相関係数を求めた結果,各方向におけるMSTの級内相関係数はr=0.88~0.96と高値を示した。また,MSTと筋力,歩行機能との間には,いずれの方向のMSTにおいても同程度の有意な相関関係が認められた。MSTは信頼性が高く,各測定条件によって有意差はなかった。MSTは高齢者における動的立位バランスについて,前後左右のいずれの方向に障害をきたしているかどうかをスクリーニングする指標となりうることが示唆された。
症例研究
  • -運動療法に対するコンプライアンスの低さが問題となった事例に対する インタビューの結果から-
    沖田 一彦, 小林 弘基, 星野 晋
    2004 年 19 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/08
    ジャーナル フリー
    代替医療を利用し運動療法に対するコンプライアンスの低さが問題となった症例に対し,インタビューを実施してその理由を質的に分析した。症例は,62歳の左下腿開放性骨折の男性であった。手術後,理学療法室での積極的な運動療法が開始されたが,担当理学療法士の指示を守らず自己流の運動を行なう,院内において民間療法である軟膏を利用するなどが問題となった。非構造化インタビューの結果,患者には,軟膏の効果に関する言説をもとに,それを塗ることで生じる皮膚の変調と症状の軽減とを因果的に結びつけて考える認知構造が存在していると考えられた。代替療法の利用は医療全体の問題となっているが,そのような患者の行動の背景には,感覚,意味付け,身体イメージの形成をキーワードとした認知機構が横たわっていると考えられた。
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