理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
症例研究
患者はなぜ代替医療を利用するのか
-運動療法に対するコンプライアンスの低さが問題となった事例に対する インタビューの結果から-
沖田 一彦小林 弘基星野 晋
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 19 巻 1 号 p. 61-65

詳細
抄録

代替医療を利用し運動療法に対するコンプライアンスの低さが問題となった症例に対し,インタビューを実施してその理由を質的に分析した。症例は,62歳の左下腿開放性骨折の男性であった。手術後,理学療法室での積極的な運動療法が開始されたが,担当理学療法士の指示を守らず自己流の運動を行なう,院内において民間療法である軟膏を利用するなどが問題となった。非構造化インタビューの結果,患者には,軟膏の効果に関する言説をもとに,それを塗ることで生じる皮膚の変調と症状の軽減とを因果的に結びつけて考える認知構造が存在していると考えられた。代替療法の利用は医療全体の問題となっているが,そのような患者の行動の背景には,感覚,意味付け,身体イメージの形成をキーワードとした認知機構が横たわっていると考えられた。

著者関連情報
© 2004 by the Society of Physical Therapy Science
前の記事
feedback
Top