理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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22 巻, 2 号
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研究論文
  • ─座圧分布変位の時間的要素による検証─
    小原 謙一, 江口 淳子, 藤田 大介, 西本 哲也, 石浦 佑一, 渡邉 進
    2007 年 22 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,椅子上安楽座位におけるずれ力発生メカニズムを検証することである。健常成人男性10名を対象に,背もたれの‘有り’・‘無し’の2条件下にて圧力分布測定器を用いて体幹後傾に伴う座圧分布変位幅と背もたれに接してから座圧中心位置が移動するまでの時間差を計測した。その結果,座圧中心位置は,体幹後傾に伴って徐々に後方へ移動し,背もたれ‘有り’ではもたれた直後(0.2±0.1 sec後)に前方へと反転していた。その際の変位幅は,‘有り’では基本座位よりも0.5±1.2 cm前方に移動し,‘無し’では2.0±1.1 cm後方へ移動しており,両者には有意な差が認められた(p<0.01)。これらの結果は,ずれ力発生には背もたれの介在が不可欠であることを示唆するものであった。
  • ─機能的fMRIによる大脳賦活の検討─
    津吹 桃子, 渡邉 修, 来間 弘展, 松田 雅弘, 池田 由美, 妹尾 淳史
    2007 年 22 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    リハビリテーションの治療において,視覚的フィードバックを利用して指導する機会は多い。今回,手指の随意運動における視覚的確認の影響について機能的MRIを用いて分析し,脳の賦活分布を検討した。運動課題を自己ペースで閉眼にて行う場合と,鏡を通して視覚的確認をしながら行う場合とを比較した。視覚的確認を行うことにより,対側感覚運動野の賦活範囲が増大する傾向が示唆された。また,後頭葉の賦活以外に,前頭葉,頭頂葉,側頭葉においても賦活が増加する傾向があり,さらに運動と同側の感覚運動野の賦活もみられる傾向があった。以上の賦活領域の拡大は,リハビリテーションにおける視覚情報の活用の有効性に関連しているのではないかと考えられた。
  • 村田 潤, 村田 伸, 甲斐 義浩
    2007 年 22 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,簡易下肢機能評価法として紹介された下肢荷重力測定について,大腿部筋の筋電図および下肢荷重量をリアルタイムで測定し,それぞれの動的変動の関連性から,下肢荷重力に対する大腿筋の役割について検討した。対象は健常成人男性9名であり,下肢荷重力測定時の荷重量と大腿四頭筋および大腿二頭筋の筋電図を測定した。下肢荷重力測定時に大腿四頭筋および大腿二頭筋の筋放電量はともに増加するが,その増加量は大腿四頭筋でより大きく,荷重力発揮に対する大腿四頭筋活動の貢献が大きいことが示唆された。また,筋放電量と荷重量のピーク値までの到達時間は異なることら,下肢荷重力に対して下肢筋力以外の要因の関与が考えられた。
  • 大杉 紘徳, 美和 香葉子, 重森 健太
    2007 年 22 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,健常成人における後方歩行の特徴を明らかにすることである。対象は,当大学学部生27名(男性17名,女性10名)であった。測定項目は,10 m前方歩行,10 m後方歩行とし,後方歩行の終了直後にはVAS(visual analog scale)を測定し,主観的な恐怖感を確認した。なお,歩行速度は被検者の自由な速度(自由歩行)とし,歩行に要した時間(所要時間)と歩数,そして実際の歩行距離を測定した。結果,後方歩行は前方歩行と比較して,歩幅の減少(p<0.001),歩行率の減少(p<0.05),歩行速度の低下(p<0.001),歩行比の低下(p<0.001)が認められた。恐怖感は後方歩行とは関係が無かった。以上のことから,健常成人の後方歩行は,心因的要因に左右されることなく,歩幅を大きく減少させることにより,歩行速度及び歩行比を制御していることが示唆された。
  • 美和 香葉子, 大杉 紘徳, 重森 健太, 吉川 卓司
    2007 年 22 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    今回,高齢者の後方移動の特徴を明らかにすることを目的に,高齢者の後方歩行の特徴およびバランス能力との関連性を検討した。対象は転倒予防教室に参加した健常高齢者11名であった。測定項目は,10 m前方歩行,10 m後方歩行,Functional Reach Test,片脚立位テストとした。前方歩行と後方歩行との差の検定には,対応のあるt検定を使用し,後方歩行とバランス能力との関係をPearsonの相関係数を用いて分析した。結果,高齢者における後方歩行は,前方歩行に比べて,歩幅の減少(p<0.001),歩行速度の低下(p<0.001),歩行比の低下(p<0.001)が認められ,バランス能力との関係は低かった。以上のことから,高齢者の後方歩行は歩幅を減少させることで歩行速度や歩行比を調整することが明らかとなり,後方へのバランス移動性を捉えることができる可能性が示唆された。
  • ─足圧中心軌跡による分類法の検討─
    桜井 進一, 坂本 雅昭, 中澤 理恵, 川越 誠, 加藤 和夫
    2007 年 22 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,健常成人女性の足圧中心(COP:Center of pressure)軌跡を調査し,COP軌跡を内外側偏位の観点から分類する方法を検討する事である。対象は健常成人女性75名とし,足底圧測定装置を用いて歩行時COP軌跡を測定し,さらにCOPの位置座標を用いた独自の分類条件により,対象者のうち平均的な軌跡を描く群,内外側へ偏位を示す群への分類を試みた。分類の結果,各群はそれぞれ異なる特徴的なCOP軌跡を示した。今回の分類方法によって対象者をCOP軌跡の内外側の偏位により分類することができたため,今後はCOP軌跡の特性毎に足底板が歩行時COP軌跡に及ぼす影響を検討する事が課題である。
  • ─心拍一定負荷による検討─
    矢部 広樹, 今井 正樹, 久保 裕介, 安田 幸平, 西田 裕介
    2007 年 22 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究では自転車エルゴメータを用い,ペダルの回転数の違いが酸素摂取量(VO2/W)および平均動脈圧(MAP)へ与える影響について検討した。対象は若年健常男性14名で,ペダルの回転数は60 rpmと80 rpmに設定した。方法は3分間の安静の後,5分間のウォーミングアップ(W-up)を含む計25分間の運動を実施した。運動強度は目標心拍数が(220-年齢)×0.6となる心拍一定負荷とし,安静,W-up,20分間の運動時で1分毎にVO2/W,血圧を測定した。また,心拍一定負荷による20分間の運動を5分毎の4 stageに分類し,stageごとの平均値を比較した。その結果,VO2/Wはstage 1で80rpmの方が有意に高く,MAPは全てのstageで80 rpmの方が有意に低くなった。したがって,80 rpmでの運動の方が効率よく安全に実施できると考えられる。
  • ─視線と視覚情報への意識の関与─
    松尾 恵利香, 越後谷 和貴, 長田 真一, 高良 光, 野中 美里, 佐々木 誠
    2007 年 22 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    健常者28名を対象に,立位を保持させ左右両側を前方より他者が歩いて接近し通り過ぎていく視覚的外乱情報が提供される状況下で,平行支持台内に立つか平行支持台のない環境内に立つか,視線を固定するか自由とするかの各条件で,重心動揺を測定した。その結果,平行支持台の有無,視線条件の相違は重心動揺に影響しなかった。人が通ることを強く意識した群は,平行支持台がある場合に限って固定した視線に対する自由な視線の重心動揺面積が高値であった。以上より,健常者において人が通ることへの意識が高かった者は,視線を自由にすると周辺視野に入力される平行支持台の視覚情報も手伝って近づく人からの影響を受け,視線を固定したときよりも重心動揺が大きくなると考えられた。
  • 中原 和美
    2007 年 22 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30テスト)は,障害者や低体力者にも適用できる可能性があるが今までに実施した報告は少ない。そこで介護予防筋力向上トレーニング事業参加中の高齢者を対象に,CS-30テストと最大下肢伸展筋力と生活機能の関連性について検討した。測定実施時には支障となる関節痛や運動中止基準の自覚・他覚症状は見られず,安全に施行できた。結果,下肢最大筋力とCS-30テストは有意な正の相関を認めた(r=0.90,p<0.05)。また,老研式活動能力指標を用いた生活機能と有意な関連性は見られなかった(手段的自立 r=0.45,知的能動性 r=0.11,社会的役割 r=0.07)。高齢者の身体能力は個人差が大きく,また,今回は対象者が少ないが,虚弱高齢者に対する施行方法およびリスク管理の確認として今回の測定・調査は有用であったと思われる。
  • 隈元 庸夫, 伊藤 俊一, 久保田 健太, 山本 巖, 阿部 康次, 藤原 孝之
    2007 年 22 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本報告の目的は健常者を対象に理学療法で多く用いられている手技である他動的な足関節背屈位保持時の腓腹筋の形状変化を非侵襲的測定法である超音波法を用いて矢状面上で撮影し,画像から得られた停止腱と筋束とのなす角(羽状角)と背屈位保持に拮抗する底屈筋のトルク値(足底への押し付け力)を測定することで超音波法が理学療法効果の検証の一助となり得るかを検討することである。結果,各測定値の信頼性は高かった。また底屈位と比較して背屈位で羽状角の減少と足底への押し付け力の増大を認めた。これらのことから他動的な背屈保持における筋形状変化に関するマクロ的な基礎的情報としては,腱の受動的張力の発生による羽状角の減少が示唆され,超音波法は理学療法効果の検証の一手段となりうると考えられた。
  • 片岡 保憲, 越智 亮, 和田 隆二, 太場岡 英利, 森岡 周, 八木 文雄
    2007 年 22 巻 2 号 p. 235-238
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    選択的注意をはじめとする認知過程が立位姿勢制御におよぼす効果を検証する目的から,健常者に対して,静止立位のみを維持する単一注意要求課題,および静止立位の維持(第1課題)と視覚・聴覚性提示による引き算(第2課題)を同時に遂行する同時二重注意要求課題を課し,各課題遂行中の立位姿勢動揺を解析した。同時二重注意要求課題遂行中における立位姿勢動揺は,単一注意要求課題のそれに比べて有意に減少し,同時二重注意要求課題の遂行が立位姿勢の安定化制御に対して促進性に作用することが認められた。こうした現象を背後で支えるメカニズムについて、選択的注意における資源依存型処理過程とデータ依存型処理過程の側面から論議した。
  • ─片手片足駆動者と両手駆動者との比較─
    木村 美穂, 浅井 結, 渡辺 和恵, 金澤 悠, 三浦 尚子, 佐藤 法明, 佐々木 誠
    2007 年 22 巻 2 号 p. 239-243
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    介護老人保健施設に入所中の車椅子自走者13名を対象に,マシーンを使用した体幹回旋運動のトレーニングを週5回,3週間実施した。片手片足駆動者8名と両手駆動者5名とで,トレーニング前後で体幹回旋力と車椅子駆動能力を測定し,車椅子駆動方法による効果の差異を比較検討した。体幹回旋力は両群ともに有意に増強した。車椅子駆動能力は,2.5 m往復路駆動時間と6分間駆動距離は,いずれの群も変化を認めなかった。5 m駆動時間は,トレーニング前で片手片足駆動群よりも両手駆動群が有意に時間を要したのに対して,トレーニング後は両群間の差異を認めなかった。以上より,体幹回旋運動の3週間のマシーントレーニングは,両群ともに体幹回旋力を増強させ,両手駆動者において車椅子駆動の速度を片手片足駆動者と同等にまで速めることが示唆された。
  • 辻野 綾子, 田中 則子
    2007 年 22 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    立位での前方リーチ動作の際には,前足部への荷重が増大し,足趾の支持が重要になると考えられる。本研究では健常女性19名を対象とし,立位での足趾圧迫力の大きさと前方リーチ時の足圧中心(Center Of Pressure:COP)位置との関係を検討した。その結果,10°前方傾斜リーチ(股・膝関節,足部規定あり)条件と最大前方リーチ(規定なし)条件において,母趾圧迫力と最終肢位保持時のCOP位置には有意な正の相関が認められ,最大前方リーチ条件では母趾圧迫力のみならず,第2~5趾圧迫力と最終肢位保持時のCOP位置においても有意な正の相関が認められた。これらの結果より,前方リーチ保持時には足関節底屈力だけでなく,前足部や足指の底屈方向への力発揮も重要であることが示唆された。
  • 佐藤 仁, 丸山 仁司
    2007 年 22 巻 2 号 p. 249-253
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    一側上肢から反対側下肢への影響を明らかにすることを目的に,健常男性25名を対象に,右上肢PNF屈曲-外転-外旋パターンの開始肢位,中間肢位,終了肢位で等尺性抵抗運動を施した。各運動中の両下肢伸展方向にかかる力をハンドヘルドダイナモメーターで測定した。左下肢伸展方向にかかる力は,右上肢終了肢位での等尺性抵抗運動が有意に高値を示した。右下肢伸展方向にかかる力は,上肢各肢位間で有意差を認めなかった。右上肢各肢位での等尺性抵抗運動では,すべて左下肢伸展方向にかかる力が有意に高値であった。一側上肢屈曲-外転-外旋パターンへの等尺性抵抗運動が,反対側下肢伸展方向の筋力増強のひとつの手段として応用できる可能性がある。
  • 石井 秀明, 江間 崇人, 西田 裕介
    2007 年 22 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,若年健常男性12名(平均年齢21.0±2.3歳)を対象に,負荷強度の異なる持続的な把握動作が血圧応答に及ぼす影響について検討した。設定強度は,最大握力の10%,30%,50%とした。方法は5分間の安静後,各設定強度にて2分間の持続的な把握動作を行わせ,安静時及び把握動作終了時の血圧を測定した。統計は安静時と終了時の比較に対応のあるt検定を用い,また,負荷強度を要因とする一元配置分散分析と多重比較検定を用いた。その結果,収縮期血圧,拡張期血圧ともに終了時の測定値において,10%負荷強度と50%負荷強度及び30%負荷強度と50%負荷強度との間に有意差があり,50%負荷強度が有意に増加していた(共にp<0.05)。以上のことにより,30%負荷強度と50%負荷強度間に,血圧を上昇させる要因が存在する可能性があると考えられる。
  • 山野 薫, 薬師寺 里江, 大平 高正, 都甲 純, 井上 博文, 秋山 純和
    2007 年 22 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    筆者が勤務する医療機関の理学療法部門で,臨床での状態変化を記載する「状態変化カード(カード)」を作成し,カード119件の内容を分析した。状態変化の原因は,循環器系の変動,運動器系の変化,精神・心理面の変化など,多様な理由であることがわかった。さらに,カードを病院内のLocal Area Networkにより公開をし,効果的な運用を試みた。これにより,病院全体で理学療法を施行している患者の状態把握ができるようになった。また,病院内で定められているインシデント・アクシデント報告書の内容がポジティブに変化した。カードは,理学療法部門からのリスクマネジメントに関する情報発信となり,アクシデントを回避できることを示唆している。
  • 山田 和政, 岩井 和子, 梶野 しず江, 宮田 しのぶ, 粕谷 信子, 長岡 美月, 堀口 亜由美
    2007 年 22 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    精神科病院在院患者30名を対象に,日常生活状況,転倒状況,身体バランス能力,歩行能力および骨密度を調査した。28名が院内を,2名が病室内を主たる生活活動場所としていた。30名中4名(13.3%)が転倒を経験していた。身体バランス能力は転倒経験を有する虚弱高齢者と同等レベルであった。最大歩行速度と骨密度はともに同年齢者と比較して低値であった。高齢化が進む精神科領域において,身体運動能力の改善と生活活動範囲の拡大を図っていく上で,今後,理学療法士の積極的な介入が求められる。
  • -一症例における内省報告からの分析-
    前井 千早, 片岡 保憲, 森岡 周
    2007 年 22 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    下肢の知覚の延長に着目し,義足症例に知覚課題を行い,内省報告から意識経験を分析することにより,切断肢の知覚状況を検証する。右下腿切断を呈した81歳の男性1名を対象とした。4週間にわたり,被験者の左足底部,右断端部,右義足足底部の条件に対し,知覚課題として,素材,形状,硬度,重量の4項目の違いを識別させ,それぞれの正答率と内省報告を抽出し,分析を行った。その結果,正答率では各条件ともに硬度,素材,形状,重量(重量は左足底部と右義足足底部)の順であった。内省報告では,素材や形状では他の課題との比較や受動的接触から能動的接触への移行など記述内容に経時的変化が見られたが,硬度や重量では大きな変化は得られなかった。
  • 武田 要, 勝平 純司, 藤沢 しげ子
    2007 年 22 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究では妊婦期の姿勢,運動の経時的変化が腰部へ及ぼす影響を知るために妊娠24週と32週での静止立位時と歩行時の体幹前後屈モーメントを3次元動作解析装置にて計測した。立位では2例で体幹角度と体幹モーメントは比例関係を示していたが,1例では妊娠経過と共に体幹後傾角度増加にもかかわらず体幹前屈モーメントは減少していた。このことは妊娠経過に伴う腹部膨隆により生じる身体重心の前方移動によりHAT(頭部,両上肢,体幹)の重心が前下方へ移動し回転中心と重力とのレバーアームが短くなった為と考えた。歩行時ではHATの重心に生じる慣性力と体幹角度が体幹前後屈モーメントに影響を与える為,体幹後屈傾向の例では両脚支持期後半において体幹後屈モーメントが減少していた。一方で両脚支持期後半に体幹角度,床反力後方成分の増加にかかわらず体幹後屈モーメントが発生しない被験者も存在し,HATの重心が下方に位置しレバーアームが短くなった為と考えられた。
  • -若年者との比較-
    常 冬梅, 霍 明, 丸山 仁司
    2007 年 22 巻 2 号 p. 287-292
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    若年者44名と地域在住の高齢者64名を対象にし,物体の高さ及び時間に関する高齢者の認識能力と転倒の関連性について検討した。大きさ20 cmの立方体の距離とTimed Up and Go test(TUG)の時間の認識誤差(予測値と実測値の差)を測定した。結果として高齢者群特に高齢転倒群において,若年群との間に有意差が認められた。「過去1年間での転倒の有無」を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,TUGの実測値、TUG認識誤差と右手の認識誤差を抽出し,転倒予測スケールを作成した。ROC曲線の評価から曲線下面積が0.801,cut off値2点と判断したところ,転倒に対する感度と特異度はそれぞれ75%であった。認識誤差を用いて転倒を評価する方法の有効性が示唆された。
  • 大田尾 浩, 村田 伸, 有馬 幸史, 溝上 昭宏, 弓岡 光?コ, 武田 功
    2007 年 22 巻 2 号 p. 293-296
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,脳卒中片麻痺者を対象に市販体重計を用いて下肢荷重力を測定し,立ち上がり動作能力との関連について検討した。対象は,脳卒中片麻痺者40名(男性17名,女性23名,平均年齢72.7歳)で,立ち上がり要介助群,条件付き(要上肢支持)自立群,自立群の3つに分類し,それぞれの下肢荷重力を比較した。その結果,非麻痺側と麻痺側の下肢荷重力の合計値は,立ち上がり動作能力別に有意差が認められ,立ち上がりが自立している者ほど大きな下肢荷重力測定値を示した。これらの知見から,座位での下肢荷重力測定は,立ち上がり動作を反映する簡易下肢機能評価法として有用であることが示唆された。とくに,坐位で測定が可能なため,治療上立ち上がり動作が許可されていない片麻痺者の立ち上がり動作の予後予測に使用できる可能性が示唆された。
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