抄録
立位姿勢で重心位置を最大限に移動する動作課題を与え,その時の足圧中心の移動軌跡を重心動揺計で計測した。この軌跡に囲まれる最大領域を重心移動域とした。同時に足形を方眼紙に転写し支持基底面積を計測した。本研究では,バランス制御能力評価のパラメータの1つとして,これらの比を用いる可能性を検討することを目的とした。被験者は青年男女20名(男性13名,女性7名)であった。検査台に方眼紙を敷いた重心動揺計の上で立位姿勢をとり,足形を転写した後,規定の動作を行った。支持基底面積は方眼紙上の足形の座標値より算出した。重心移動域は重心動揺計で計測した外周面積を採用した。立位姿勢は閉脚と開脚(10 cm)の2種類とした。結果,支持基底面積は閉脚時373.0±38.5 cm2,開脚時602.9±54.2 cm2,重心移動域は閉脚時105.7±18.2 cm2,開脚時187.3±21.2 cm2であった。支持基底面積に対する重心移動域の割合は閉脚時28.4±4.2%,開脚時31.3±4.3%であった。これらのパラメータはバランス制御能力評価のための指標として利用できる可能性を有していると考えた。