抄録
〔目的〕本研究では,音叉を用いた振動覚検査を実施し振動覚と転倒の関連性を検討し,振動感知時間のカットオフ値を求めた。〔対象〕歩行が可能な高齢者63名を対象とし,認知症と中枢性疾患を有する者は除外した。〔方法〕音叉を用いた振動覚検査と運動機能検査(Timed "up & go" test,Modified Functional Reach-test,10 m自由歩行時間),転倒経験のアンケート調査を実施し,転倒群と非転倒群の比較検討を行った。〔結果〕転倒群は非転倒群に比べ振動感知時間が有意に短かった。また,振動感知時間と運動機能検査にも有意な相関が認められた。振動感知時間のReceiver-Operating-Characteristic(ROC)曲線の曲線下面積は0.89で最も大きくなっていた。カットオフ値は5.62秒であり,感度は82%,特異度は83%であった。〔結語〕高齢者に対する音叉を用いた振動覚検査は,転倒リスク評価に有効であると示唆された。