抄録
〔目的〕我々は,2006年と2009年に急性期病院の理学療法部門におけるリスクマネジメントの現状調査を行い,両者を比較検討することで近年の理学療法部門のリスクマネジメントの環境の変化を考察し報告することを目的とした.〔対象〕福祉保健医療情報ネットワーク事業に登録されている施設の中から検索し抽出した169施設(2006年)と247施設(2009年)とした.〔方法〕郵送による質問紙法とした.質問内容は,病院概要,部門の構成,リスクマネジメントに関する医療機関の人的および物的環境を尋ねる項目とし,2006年と2009年の結果を比較検討した.〔結果〕回収した質問紙は,2006年は112通(回収率66.3%),2009年は147通(回収率59.5%)であった.リスクマネジメントに関して理学療法部門で整備すべき機器や帳票類の中で,手動式人工呼吸器と理学療法部門からの連絡票,および理学療法中止基準の整備が2006年の調査に比べて有意に増加していた.〔結語〕理学療法対象者のリスクマネジメントに関しては,「アクシデントやインシデントを未然に防ぐ施策」と「一旦生じたアクシデントが重篤な結果に至らないようにするための施策」を分けて考えておくことが重要である.今回の結果は,いずれも医療の質を維持向上させ,安全を確保する手段であり,評価できる.急性期病院での理学療法は,患者の生命予後にかかわる項目も多いことから,今後も患者の急変への予防と対応を主体とした安全確保のためにさらなる人的環境と物的環境の整備が求められる.