抄録
ヒトは地球の重力や気圧のなかで環境に適合した直立姿勢を維持している。それは二本の下肢で骨盤を支え、脊柱を生理的彎曲に保ち、重い頭蓋を最上端に乗せている。この背面彎曲にはさまざまな形態が見られる。今回、腹臥位姿勢が直立姿勢を形成する基本姿勢になることを想定して、腹臥位において骨盤と腰部の縦傾斜角(背面彎曲)を計測して、その頻度状況を観察した。その結果、骨盤傾斜はとくに女性に顕著であった。骨盤と腰部の縦傾斜角には加齢的変化がみられた。すなわち加齢により骨盤は後傾して腰椎前彎は減少し、腰椎上部の傾斜増加により胸椎後彎が増強していた。そして加齢による老人性の円背姿勢をとる分岐点が定量的に見出された。その要因として椎間板の変性と下肢の屈曲変形が示唆された。さらに腹臥位による側面姿勢分類も試みたので報告する。