抄録
本研究は,健常若年者11名と高齢者19名を対象に,椅子からの立ち上がり動作について運動学的分析を行った。また高齢者は,その動作能力に基づいて動作自立群11名と動作低下群8名に分けて比較した。その結果,動作低下群で1)動作時間の延長と第1相の比率の増加,2)離殿時期における支持基底面と身体重心との間の距離の減少,3)身体重心の最大水平速度の低下,4)離殿時期における体幹屈曲角度の増加が認められた。このことから,動作能力の低下した高齢者は力学的に安定した姿勢調節を行って立ち上がることが示唆された。