理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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13 巻, 2 号
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  • 大橋 美幸
    1998 年 13 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    記憶障害を補う環境を外的補助と言う。痴呆性老人の記憶障害に対して外的補助の有効性を調査した。対象は老人保健施設の入所者15名,全員女性(平均年齢83.8歳,NMスケール評価点平均32.8点)であった。下記の課題を行わせ,外的補助の利用前後の解答内容の変化をみた。「課題1;物の場所の記憶」に対してラベルを利用し,正答数が有意に向上した。「課題2;工程の記憶」に対してラベルを利用し,正答数が若干,向上した。「課題3;人の名前の記憶」に対してメモを利用し,正答数が有意に向上した。「課題4;予定の記憶」に対してタイマーを使用し,正答数が若干,向上した。「課題5;道すじの記憶」に対してテープ,矢印を利用したが,正答数は向上しなかった。痴呆性老人の記憶障害に対して外的補助を有効に活用する可能性が示唆された。
  • 枡 良充, 内山 靖, 恩幣 伸子, 山田 美加子, 榎本 香織, 軍司 晃
    1998 年 13 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    階段昇降時の動作特性を明らかにする事を目的として,F-SCANを用い足圧中心の移動軌跡を健常人・患者25名に対して測定し,以下の結果を得た。健常人の階段昇降動作での足圧中心の移動軌跡は,前足部から踵方向へ移動後,再び前方へ移動する戻り型(Aタイプ)と,平地歩行と類似したの前方向型(Bタイプ)に大別された。健常人の降段動作での足圧中心の軌跡は全てAタイプで,昇段に比較して左右への変位を認めた(p<0.01)。一方,昇段ではA・Bの両タイプがみられた。患者では,降段動作の障害がより顕著で,機能改善とともに健常人の足圧中心の軌跡波形に近付く傾向が観察された。また,杖は立脚期を安定化させる役割があることが客観的に示された。階段昇降時の動的足圧を測定する事により,降段動作の姿勢制御の複雑さの一端が明らかとなった。
  • 西田 宗幹, 植松 光俊, 金澤 寿久, 宮本 千恵美
    1998 年 13 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者の各基本動作間の難易度は,一般的には寝返り,起座,起立,歩行の順に難しくなると言われるが,その順位の異なる者の比率とその原因について検討するため片麻痺患者40名を対象に調査した。一般的順位と同じ「同群」は29名,異なる「異群」11名で,このうち起座が不可で起立,歩行が可の「異群(1)」は9名であった。「異群(1)」は股伸展0°以下と体幹回旋制限5°以上において「同群」と有意差があり,異群(1)のうち寝返り,起座とも不可の群では体幹屈曲5°以上制限にも有意差を認め,これらの動作困難の原因として股・体幹可動域制限の影響が示唆された。対象者が高齢で,物的介助起立・平行棒内歩行と低い能力レベルで,半側無視例が多くいたことが,このような動作難易度順位の逆転現象の誘因として考えられた。
  • 市橋 則明, 池添 冬芽, 羽崎 完, 白井 由美, 浅川 康吉, 森永 敏博, 濱 弘道
    1998 年 13 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,健常男性12名を対象に,各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量を明確にし,さらに各筋のMMT3の筋活動と比較することである。測定筋は,大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大内転筋とし,各筋の整流平滑化筋電図を求めた。その結果,両脚ブリッジの筋活動量は20%以下の低い筋活動であった。一方,片脚ブリッジの筋活動量は,股伸展・外転筋で高い値を示し,両脚ブリッジと比較し,すべての筋において有意に増加した。MMT3の筋活動とブリッジ動作を比較すると,大内転筋を除いて片脚ブリッジの方が大きい筋活動を示した。本研究結果より,片脚ブリッジは大殿筋だけでなく中殿筋や大腿筋膜張筋の筋力トレーニングとして有効であることが示唆された。また,片脚ブリッジをするためには,MMT3以上の筋活動が必要であり,訓練処方の1つの基準となると考えられる。
  • 小島 悟, 武田 秀勝
    1998 年 13 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,健常若年者11名と高齢者19名を対象に,椅子からの立ち上がり動作について運動学的分析を行った。また高齢者は,その動作能力に基づいて動作自立群11名と動作低下群8名に分けて比較した。その結果,動作低下群で1)動作時間の延長と第1相の比率の増加,2)離殿時期における支持基底面と身体重心との間の距離の減少,3)身体重心の最大水平速度の低下,4)離殿時期における体幹屈曲角度の増加が認められた。このことから,動作能力の低下した高齢者は力学的に安定した姿勢調節を行って立ち上がることが示唆された。
  • 山端 るり子, 臼田 滋, 遠藤 文雄
    1998 年 13 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    健常中高年女性における家庭で行う筋力トレーニングが,膝屈伸筋力,バランス,歩行能力に与える効果の検討を本研究の目的とし,トレーニング群12名(68.6±4.1歳)とコントロール群7名(69.0±3.7歳)を分析対象とした。筋力トレーニングは,坐位や立位での重錘バンドを用いた10項目の抗重力運動で構成され,運動強度は8~10回の反復運動でRPEI5,運動頻度は1日4~5項目を3セット,1週間に2~3日とし,3カ月間にわたり施行した。トレーニング前後において,トレーニング群では,機能的バランス,10m最大歩行速度,6分間歩行距離が有意に向上し,筋力と静止立位時の重心動揺に変化はなかった。コントロール群では,6分間歩行距離のみに向上が認められた。本研究における筋力トレーニングは,健常中高年女性の機能的バランスと歩行速度の向上に効果があった。
  • 井垣 誠, 木村 朗, 神田 満, 佐野 憲康, 謝 詔東
    1998 年 13 巻 2 号 p. 95-97
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,薬物療法を施行していない入院NIDDM患者5名において,50%AT強度運動のcarryover効果を検討することであった。自転車エルゴメータを用いて,ATにおける負荷値の50%の強度で30分間運動負荷を実施し,翌日朝食前空腹時に血糖値,血清インスリン値,脂質を測定した。運動負荷を実施していない安静日の翌日も同様の検査を行った。安静日と運動日とのデータを比較した結果,50%AT強度運動のcarryover効果は,今回の被験者群において安静データとの比較上,認めなかった。
  • 井垣 誠, 木村 朗, 神田 満, 佐野 憲康, 謝 詔東
    1998 年 13 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    NIDDM患者14名を,血清インスリン濃度より高インスリン群と低インスリン群とに分け,自転車エルゴメーターを使ったATにおける負荷値の50%の強度で30分間運動負荷を実施した。その運動前後に採血を行い,血糖値,血清インスリン濃度について測定した。血糖変動値について,高インスリン群は低インスリン群と比較し有意な血糖降下を認めた。すなわち,50%AT強度運動による血糖降下作用は,インスリンレベルに依存していることが示唆された。50%AT強度運動は,NIDDM患者の中でもインスリンレベルが高い状態において,急性血糖降下作用を期待できることが推測された。
  • 木村 朗
    1998 年 13 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    糖尿病に関する理学療法の総説的問題点と課題について,以下の構成によって示した。近年,関連の学会による認定資格や業務としての位置づけが明らかになってきた。取り組むべき具体的課題の分類を示し,心構えを述べた。
    1.糖尿病に関する理学療法の総説的問題点と課題
    2.理学療法と糖尿病の関係(最近の話題―APTAのガイドと療養指導士,教育士から)
    3.糖尿病の疫学
    4.糖尿病の理学療法―20世紀現時点でのこの分野の理学療法
    5.理学療法の発展と糖尿病に係わる理学療法技術の研究報告(オンライン検索情報)
    6.理学療法科学を見据えて,今すべきこと
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