陸水学雑誌
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琵琶湖南湖の沈水植物の分布拡大はカタストロフィックシフトで説明可能か?
芳賀 裕樹大塚 泰介
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2008 年 69 巻 2 号 p. 133-141

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抄録
 湖底の光環境が1979年から2004年の琵琶湖南湖の沈水植物の分布範囲を制限する要因となっていたかどうかを検討した。滋賀県と国土交通省が行っている定期観測の透明度と水位のデータを用いて南湖に設定した200地点で沈水植物の分布の可否を推定した。全期間を通じて,沈水植物が分布可能な水域の面積は透明度でほとんど規定され,水位の影響は小さかった。観測された沈水植物の分布範囲の面積は,1979年から1994年までは潜在的な分布範囲の面積の9~48%に過ぎなかった。1994年9月におこった琵琶湖基準水位-1.23 mに達する極端な水位低下は,同じ時期に透明度が低下したために沈水植物の分布可能な範囲の拡大をもたらさなかった。また,1994年の8,9,10月の沈水植物の分布可能な範囲の面積は,1979~1993年のそれらに較べて特に広くなかった。以上の結果から,1979~1994年の南湖の沈水植物の分布範囲を制限していたのは湖底の光環境だけではないと考えられた。したがって近年の南湖の沈水植物の分布拡大は,光制限の存在を基盤とするカタストロフィックシフトでは説明できないという結論を得た。
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© 2008 日本陸水学会
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