抄録
海洋観測データを元にした水・塩収支計算により,海底地下水湧出量の推定を試みた。対象海域は兵庫県西宮市の夙川河口の御前浜沖海域で,御前浜の潮間帯では過去に地下水流動が確認されている。2006年8月22~23日に約1日半にわたり行われた海洋観測データを用いて,水・塩収支計算で海底地下水湧出量と海域境界断面通過流量を算出した。この結果を,同時期に観測された地下水湧出量や流速,また潮流の数値シミュレーション結果と比較した。水位変化量から推定した容積変動量と計算結果の差は0.3%以下だった。算出した海域境界断面通過流は,実測流速と定性的に一致した。収支計算による海底地下水湧出量は実測値を元にした推定値の5倍と算出されたが,様々な不確定要素を考慮すると許容範囲だと考えられる。これらのことから,本研究の推定手法は海域全体への海底地下水湧出量を推定出来る可能性を持っている。観測期間の御前浜沖合海域の水収支は境界断面通過流が支配的で,南側境界から潮流に加えて残差流による一定の流入があり,東側境界から潮流に応答した流出があることが示唆された。容積変化に対する海底地下水の寄与は5~8%だった。