堆積物表層の有機炭素濃度は底層水の貧酸素化に影響する。その増減傾向を柱状堆積物試料の有機炭素濃度で検討できるかを検証するために,島根県の宍道湖で表層堆積物を採取し,過去に行われた方法で強熱減量を分析するとともに有機炭素濃度を同一試料で分析し,強熱減量から有機炭素濃度への換算式を作成した。換算された有機炭素濃度を1982年,1997年,2016年について同じ地点で比較した結果,1997年の有機炭素濃度が1982年,2016年より有意に低かった。宍道湖の柱状堆積物試料で有機物濃度を分析した既報では1990年代の減少は検出されていなかったことから,約10年程度の続成作用(有機物の変質)は,新生堆積物における数%程度の有機炭素濃度差を測定誤差範囲にまで縮めてしまうと考えられた。また検討したどの年においても塩淡境界がある西側の方が東側よりも有機炭素濃度が高かったことから,宍道湖のように塩淡境界が存在する湖沼では,貧酸素化が生じやすい有機炭素濃度が高い地点として,水深だけでなく塩淡境界の位置も考慮すべきであることが示唆された。