ビワコセンチュウRaphidascaris gigi Fujita, 1928は琵琶湖水系固有種で,アユ,ビワマス,ハス等の魚類を宿主とする特異性の低い寄生性線虫である。中間宿主または待機宿主として動物プランクトンを利用する。本種は琵琶湖でもっとも普通の魚類寄生虫と考えられていたが,2022年に琵琶湖とその近傍の水域から得られた36種535個体の魚類を検査したところ感染魚が1個体も確認されず,本種が激減していることが明らかとなった。そこで,2007~2023年に採集されたアユの標本と2004~2022年に採集されたノロの標本を用いて,ビワコセンチュウの感染状況の経年変化を調査した。その結果,2017年以降,アユとノロの両方からビワコセンチュウがいなくなったことがわかった。2023年のアユ標本から1虫体のみビワコセンチュウが得られたことから,本種は絶滅には至っていないものの,個体群は極度に縮小したと考えられた。