抄録
硬水湖沼ほどカルシウム濃度は高くないが,石灰岩台地を集水域にもつ小野湖において,夏季の成層形成期の表水層で,水温の変化や植物プランクトンの光合成に起因するpHの増加によって,炭酸カルシウム(calcite)に対して飽和指標(IAP/Kc)が計算上20以上の非常に高い過飽和状態が存在することがわかった。しかし,この状態では自生の炭酸カルシウム沈殿を生じることはなかった。炭酸カルシウムの種結晶の不在がこの原因と考えて,N2ガスを用いた脱CO2およびNaOH添加という2種類の方法で湖水のpHを上げて夏季の表層の状態を再現し,これに種結晶を添加して炭酸カルシウムの生成実験を行った。その結果,自生性炭酸カルシウムの生成には種結晶の添加と現在の全炭酸量を変えずにpHを上昇させることが必要であった。また,その添加の効果は11の湖水あたり炭酸カルシウムの種結晶を約600μmol(60mg・l-1)添加したときが最も高く,湖水中のカルシウムイオンの約20%が炭酸カルシウムになることがわかった。この時,溶存PO4-Pの1.0μmolが炭酸カルシウムと共沈除去された。
この現象は脱塩水や他のカルシウム濃度が低い湖沼では起こらず,添加した炭酸カルシウムは一部溶解され,PO4-Pを共沈することはなかった。