抄録
日常の外科外来診療において,往々にして診断に窮する疾患として頚部の腫瘤がある.しかも一般外科におけるこれらの診断と治療の進歩は“未だし”の感が強く,これは本領域が一般外科・耳鼻咽喉科・甲状腺外科・口腔外科・胸部外科の領域と重複するためと考えられ,このため今後,頭頚部外科の存在意義を考えなければならない点と思われる.
頚部の腫瘤はきわめて多岐にわたり,日常最も多く認めるものとして甲状腺腫瘤・頚部リンパ腫・唾液腺腫瘤があり,一般にこれらの腫瘤の診断は,その局在部位・性状および臨床経過などによってある程度診断しうるものが多く,その補助診断も少ない.これらの点から頚部の腫瘤の臨床的特徴を正確に把握することがきわめて大切であると考え, 1964年1月から1974年12月までに慈恵医大第一外科において経験した頚部腫瘤の臨床像をここにまとめるとともにその診断と治療にまで言及した.