抄録
循環器疾患を合併した症例における非心臓手術では,周術期の心機能の管理が手術の成否を左右する大きな要素である.虚血性心疾患および弁膜疾患を合併した上部消化管悪性腫瘍患者24例について,術前の心機能の評価,治療および術後合併症に考察を加え,手術適応および合併症発症上の問題点を検討した.虚血性心疾患合併症例において,術前の安静時狭心痛,負荷心電図における虚血性変化の有無,左室駆出率と術後合併症発現の有無との間には有意な関連は認められなかった.また,弁膜疾患合併症例において, NYHA重症度分類,左室駆出率と術後合併症発現の有無との間にも有意な関連はみられなかった.今回の検討では,術後合併症発症を予測することは出来なかったが,循環器疾患を合併した上部消化管悪性腫瘍症例においても周術期の適切な心機能評価および治療により,その多くで根治手術が可能であると思われた.