抄録
左側腹部斜切開による腹膜外到達法による腹部大動脈再建例7例を,開腹法で行った10例と手術中因子,術後因子について比較を行った.術中の出血回収の有無を除いて手術時間,術中出血量,尿量,血行動態の変化には差を認めなかった.晶質液の輸液量は有意に腹膜外群で多かったが,最近の輸血節減効果と思われた.術後の経口摂取開始は明らかに腹膜外群で早く,術後入院期間も腹膜外群で短い傾向を認めた.術後合併症は,腹膜外群にはなく,開腹群で1例に急性腎不全が発生した.腹膜外法の問題点として,右腸骨動脈遠位部の視野に難点があり,特に右腸骨動脈瘤の存在下では顕著であり,別の皮膚切開を必要とすることがあった.また,開閉創に時間を要すること,腹腔内臓器の確認が出来ないことなどが問題点として考えられた.しかし,術後経過は明らかに開腹法に比して良好であり,高リスク患者や高齢者でも早期離床が可能であると思われた.