抄録
術前の穿刺吸引細胞診にて,扁平上皮癌と診断された乳癌の1例を経験した.症例は36歳女性で,左乳房C領域に約2×2cmの弾性硬,可動性良好な腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診でClass V (squamous cell carcinoma)と診断され,定型的左乳房切断術を施行した.病理組織学的には腺腔形成を主体とした乳管癌の像を呈し,腺上皮の一部には扁平上皮化生を認めた.その腫瘍細胞はエオジン好性の広い胞体を持ち,核は不整形であった.透過電顕では,扁平上皮癌細胞に特徴的なtonofilament様の収束と,細胞間橋に相当するdesmosomeが認められた.エストロゲンレセブターおよびプロゲステロンレセプターはいずれも陰性であった.