2023 年 53 巻 p. 131-139
【目的】眼鏡加工の際に生じるとされるレンズのひずみは眼鏡装用感に影響を与え、視覚の質を低下させる。今回我々はレンズのひずみにより発生する収差に着目し、その波面収差解析を試みた。
【対象と方法】模型眼に装着したアタッチメントにレンズを取り付け、レンズを介した模型眼角膜の波面収差をWave-Front Analyzer KR-1Wを用いて測定した。はじめに模型眼、その後ガラス製検眼レンズ、ひずみ量を0度から3度で作製したレンズ①から⑦のプラスチックレンズの波面収差解析をそれぞれ10回測定して得られた収差量の統計処理を行った。
【結果】プラスチックレンズひずみ0度(レンズ①)の収差量(平均値±標準偏差)はトレフォイル・コマ収差、テトラフォイル・非点収差・球面収差・全高次収差の順に4 mm径で0.0486±0.002 μm・0.0693±0.007 μm・0.0113±0.001 μm・0.0177±0.008 μm・0.1185±0.002 μm・0.1467±0.003 μm、ひずみ3度(レンズ⑦)では0.8803±0.357 μm・0.4087±0.14 μm・0.4764±0.121 μm・0.0653±0.025 μm・0.1965±0.02 μm・1.1176±0.374 μmであった。レンズ①と⑦の4 mm径におけるすべての収差で有意差が見られた。(p<0.01、Dunnett法)
【考按】強いひずみは高次収差を発生していることが分かった。眼科で眼鏡確認を行う際にはひずみの検査を行う必要がある。ひずみが確認された場合には、眼鏡店と連携してひずみへの対処を行う必要がある。