抄録
左上腕動脈に内シャントのある慢性透析患者の同側鎖骨下静脈閉塞症の1手術例を報告する.症例は, 50歳男性で, 15年間維持透析を施行中, 2回の内シャント閉塞の既往がある.一年前より左上肢の腫脹が出現,増強し象皮病様となったため来院,静脈造影にて左鎖骨下静脈閉塞と診断した.鎖骨下静脈への中心静脈カテーテル挿入の既往はない.閉塞部位は胸郭出口部の鎖骨下静脈で,完全に器質化していたため, E-PTFE人工血管を用いて,腋窩静脈-内頸静脈バイパス術を行った.術後の静脈造影にて,グラフトの開存は確認されたが,多数の側副血行路は残存し腫脹の軽減も極めて緩慢だった.中心静脈カテーテル挿入が深部静脈血栓の原因となった報告はあるが,本例はその既往はなく原因不明であった.本症に対する人工血管バイパス術は,その末梢の動静脈シャントの存在から開存に有利であり,よい適応と考えられた.