抄録
全周狭窄型食道癌のほとんどは進行癌であるが,表在癌で全周狭窄を呈した稀な1例を経験したので報告する.症例は54歳男性. 2年6カ月前より時々嚥下困難が出現していたが,約2カ月前からほとんど食事摂取不能となり入院.下部食道EaEiに全周性の狭窄を認め,全周狭窄型(深達度MP)食道癌と術前診断した.しかし術中所見で触診にて表在癌と判断し,腹腔内リンパ節転移や臓器転移を認めなかったため,非開胸食道抜去,食道胃吻合術が施行された.切除標本では,癌巣は2.0×2.7cm大で食道全周を占める0-IIc型癌であった.病理組織検査では,ほとんどが粘膜内に限局し,わずかに粘膜下に達している低分化型扁平上皮癌であった.脈管侵襲無く,摘出されたリンパ節には転移は認めなかった.アカラシアを示す所見は認めず,粘膜固有層の線維化が認められ,これが狭窄の成因と考えられた.