抄録
われわれは過去5年間に, 4例の特発性食道破裂を経験したので報告する.症例は44歳から62歳の男性で,いずれも嘔吐の後激しい腹痛と胸痛が出現したが,早期診断は症例4を除き困難であった.症例1, 2, 3では胸腔ドレナージの排液から食道破裂を疑い,症例1, 2では食道透視にて確定診断に至った.症例3, 4では内視鏡を行い,その安全性と有効性を確認した.症例4の胸部CT検査では発症初期の両側の胸水および縦隔気腫像を的確にとらえることが可能であった.治療としては症例1では下部食道噴門部切除,胸腔内吻合,症例2では縫合閉鎖を選択したが満足のいく結果が得られず,症例3, 4では食道切除,頸部食道瘻,胃瘻造設および二期的再建とした.これは症例2で経験した重篤な縦隔炎を重視しているからであり,食道切除により縦隔を広く開放し,炎症の消退を待ち二期的に再建することが症例によっては必要であるとわれわれは考えている.