1998 年 59 巻 1 号 p. 212-216
症例は28歳女性.無月経のため近医を受診,後腹膜の腫瘍を指摘された.血液生化学検査は正常.腹部超音波, CT, MRIで右上腹部に,頭側は石灰化を伴う脂肪成分からなる充実性成分,尾側は多房性の漿液性成分からなる巨大な腫瘍を認めた.開腹すると腹水,腹膜播種,リンパ節転移の所見はなく,腫瘍は小児頭大で漿膜浸潤は認めなかった.周囲臓器との剥離も比較的容易で腫瘍摘出術を施行した.切除標本は径20×10×7.5cm,重量1,640g,黄白色調で表面不整.割面は骨組織の混在する弾性硬で充実性の部分と漿液性の液体を含む多房性の部分が存在した.組織学的には異型の強い副腎皮質類似の細胞が偽腺管を構築して充実性部分および嚢胞内面を形成していた.免疫組織化学的検索にて上皮性マーカーが陽性であることより副腎皮質癌と診断された.充実性成分と嚢胞の混在する稀な副腎皮質癌であり,若干の考察を加えて報告した.