臨床血液
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症例
重症感染症に対してG-CSFが奏効した急性骨髄性白血病の1男児例
宮林 麻里北原 文徳石井 栄三郎小池 健一中畑 龍俊小宮山 淳
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1994 年 35 巻 1 号 p. 65-68

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抄録

化学療法中に重症感染症を合併し,granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)が奏効した急性骨髄性白血病(FAB分類M3)の1男児例を経験した。症例は5歳男児で,多剤併用化学療法により寛解を得たが,13カ月後に再発し当科へ再入院した。BHAC-MMP療法(BH-AC, MIT, 6-MP, PSL) 2クール終了後の骨髄抑制期に発熱し,右下顎歯周囲炎から下顎底蜂窩織炎を併発した。このときの末梢血好中球数は5/μlで,血液学的には寛解状態であった。各種治療にもかかわらず,10日間以上の高熱持続,局所症状の悪化がみられたため,G-CSF 400 μg/m2/日の皮下投与を開始した。投与開始後5日目より末梢血好中球数が回復し,解熱傾向が出現した。なお,急性期の口腔内および解熱後に自壊した歯周囲膿瘍から緑膿菌が検出された。G-CSF投与によるAMLの再発はみられなかった。BHAC-MMP療法3クール終了後,G-CSFを併用しながら姉からの同種骨髄移植を行い,現在完全寛解を維持している。
AML治療の支持療法にG-CSFを併用するか否かは議論の的であるが,本症例のごとく救命を目的とした使用は積極的に試みるべきと考えられる。

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© 1994 一般社団法人 日本血液学会
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