日本臨床外科学会雑誌
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難治性唇状空腸瘻にポリアクリル酸ナトリウムを使用した1例
中村 雅彦松田 昌三山崎 良定西山 範正畠山 理田中 邦彦
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1999 年 60 巻 1 号 p. 114-119

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抄録

ポリアクリル酸ナトリウムの散布が周囲組織の保護に有効であった, High outoput dischargeを伴う難治性唇状空腸瘻の1例を報告する.患者は55歳,男性.幽門側胃部分切除術を施行された後,縫合不全から汎発性腹膜炎を合併した. 6カ月後,上腹部に発赤潰瘍を伴うびらん状皮膚縁に囲まれた8×4cm大の腸管漿膜面の露頭と多数の腸瘻孔群が形成されていた状態で当科に転院した.市販されているあらゆるストーマ製品を使用し,管理に努めたが,奏効せず,やむをえず,通常は化学製品の添加材料であるポリアクリル酸ナトリウムを患者本人の承諾を得て,腸瘻周囲組織の保護を目的として散布使用した.それにより皮膚および腸管壁を良好に保護することができ,局所および全身状態が改善し, 4カ月後に根治術を施行し得た.

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