1999 年 60 巻 1 号 p. 134-138
症例は, 24歳女性.繰り返す激しい腹痛に対し精査加療中,腹部超音波検査で右卵巣近傍に5×4cm大のlow echoic massを認めた.小腸二重造影では回腸末端に陥凹性病変を伴う陰影欠損像を認め,また大腸内視鏡検査でも同部に易出血性の腫瘍を認めた.小腸悪性腫瘍の診断下に回盲部切除を施行した.手術の根治性を高めるために,術中迅速病理診断で腸間膜リンパ節転移や腫瘍が癒着していた近接臓器に癌の遺残のないことを確認した.病理組織学診断は,腺癌であった.術後経過は良好で,再発徴候はない.
小腸悪性腫瘍は稀であり特に若年発症は少ない.治療には外科的切除が行われるが,小腸腫瘍に関する一定の取り扱い規約はないため,術中迅速病理診断が外科的切除の根治性を高めるのに有用であった.